~ウクライナ問題を考える~想定外の危機!対岸の火事ではないウクライナ侵攻①
2022/06/06
- ロシアによるウクライナ侵攻
2月24日、ロシアが突如ウクライナに侵攻しました。
プーチン・ロシア大統領は、行動を開始する直前に、ウクライナ東部のロシア実効支配地域の独立を承認し、ウクライナ政府軍から親ロシア派住民を守ることを宣言し、これを口実にしました。どう見ても、一方的な軍事侵攻の開始で、これは、許されるものではなく、民間人の犠牲者がひとりでも少ないことを祈ります。
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EUも米国もNATOも、軍事同盟を締結していない、ウクライナへの表立った軍事支援はできず、ロシアはそれを見切って、侵攻を判断したようです。最初は足並みのそろわなかった西側主要国も次第に対ロ経済措置では協調し、ロシア政府・中央銀行関係の資産凍結やロシアの銀行を国際間の銀行送金ネットワークであるSWIFTから除外することを決めました。
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SWIFTとは、国際間で銀行同士が送金情報をやり取りして、確実に送金を行うためにもっとも使われているネットワークです。これから除外されると、膨大なエネルギー資源の輸出を背景に経常黒字を抱えるロシアが原油や天然ガスを輸出したとしても、資金決済ができないという事態に直面します。これにより、資源の輸出は難しくなり、国際市場からは切り離さることになります。
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このため、市場では、まず、原油の価格が急騰しました。一時は、WTI先物で1バレル=123ドル台をつけました。ロシアへの経済制裁により、ロシア産原油が国際市場から締め出され供給不安が広がるとの懸念が原油価格を押し上げました。
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経済制裁がロシア経済に打撃となることを嫌気して為替相場でロシア・ルーブルは、史上最安値を更新して下落、1米ドル=145ルーブルまで下げました(2022年3月10日)。市場全体では、紛争時の安全への逃避行動から、米ドルが大きく買われました。日本円やスイスフランも同様です。そして、米国でのインフレ率の上昇を受けて売り込まれていた債券も、利回り上昇が一服し、買われました。
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他には、金への需要拡大も目立ちました。金は2020年3月の新型コロナウイルス感染拡大時につけた1オンス=2,000ドル台を視野に入れています。株式相場でも、ロシアのRTS株価指数は、昨年10月の高値1,891から約38.2%の水準である742をつけました。 (その後、売買停止) いずれにしてもロシアが支払うことになる経済的代償は小さくありません。ウクライナ問題の長期化は、ロシア経済を確実に蝕ばむでしょう。
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- 対岸の火事ではないウクライナ侵攻①
全く、対岸の火事とも言えない点がウクライナ問題にはあります。日本の富裕層の資産構成は、金融資産、不動産、実物など一見、分散されているように見えます。しかし、ほとんどの資産は、日本国内の資産であるという特徴が際立っています。「集中リスク」が過大であることに気付いている方は、多くありません。
21世紀に入り、世界の流れは一段と早くなり、私たちを取り巻く経済・金融・政治・軍事環境は激動の中にあります。こうした環境の中で、日本の富裕層が気を付けるべきことは、過度の集中リスクを回避することでしょう。この課題の最も単純な解決方法は、「分散投資」に他なりません。
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今後、様々なリスクに晒され、想定外のことが起こる可能性は十分にあります。それを前提に、行動しておく時なのではないでしょうか?2020年の新型コロナウイルスの世界的感染拡大(パンデミック)を誰が予想できたでしょうか?
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そして、コロナ禍からの景気回復の過程で、過去20年ほど意識もされることがなかったインフレーションの進行にも直面するようになりました。ウクライナでは、考えられなかったロシアによる侵攻という暴挙まで起こってしまっています。人類は、もっと理性的で合理的と考えられていましたが、そうでもないとすれば、不測の事態に備えておくことは、必須でしょう。ことが起こってからでは、手遅れです。是非、「分散投資」による「資産防衛」を考えて行動してください。
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この記事の執筆者
長谷川 建一氏
国際金融ストラテジスト<在香港>シティバンクグループ日本及びニューヨーク本店にて資金証券部門の要職を歴任後、シティバンク日本のリテール部門やプライベートバンク部門で活躍。 2004年末に東京三菱銀行(現MUFG銀行)に
移籍。リテール部門でマーケティング責任者、2009年からは国際部門に異動し、アジアでの新規事業戦略として香港でのウエルスマネージメント事業を2010年に立ち上げた。2015年には香港でNippon Wealth Limitedを創業、香港金融管理局からRestricted Bank Licence を取得し、一から銀行を創り上げた。.
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▼『フィット賃貸経営通信』6月号より
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2022/06/06