「減価償却費」を正しく理解して活用しよう。不動産事業でよりキャッシュを残すためには?
2016/09/07
- 合法的に利益を圧縮する方法
こんにちは。株式会社フィット「投資の窓口」編集部です。
不動産事業をされている方であれば、一度は聞いたことのある「減価償却」という言葉。
今回は「減価償却」について学び、この仕組みを正しく理解して事業を進め、よりキャッシュを残せるようになっていきましょう。
まず事業において、売上高が同じであれば、利益が少なくなる程、税金が少なくなるのは、ご存知だと思います。
「経費をたくさん使えばいいのでしょう?」
はい、確かにその通りなのですが、設備やサービスなどの消費をして経費として計上をすると、キャッシュアウト(お金が手元に残らない)することになります。
利益を減らしながら、キャッシュをより多く残すためには、どうすればよいのでしょうか?
これが、「減価償却費」をうまく活用することで可能になるのです。
- 減価償却費は、簡単にいうと「モノの劣化代金」
例えば、1,000万円で、店舗を買って商売を始めたとしましょう。
ところが最初の年の決算では、1,000万円全部を経費にしたので、大赤字になりました。
そして翌年は、ビルの費用はかからないので、建物は無料で使用して商売したことになります。
最初の年は利益を出しにくく、二年目以降は利益を出しやすくなります。
…これでは、何かおかしいと感じませんか?
そこで、税金の世界では、モノの劣化代を経費として認めて、毎年分けて経費処理をするルールになっています。
減価償却とは、このように購入額をある期間に分けて少しずつ費用にする仕組みです。
この仕組みを逆に利用することによって、利益を圧縮し合法的に節税ができるのです(つまりキャッシュがより残せるようになります)。
ちなみに、価値が減らない(劣化しない)土地は、減価償却をすることができませんので、注意してください。
- 減価償却の3つの側面
1:費用配分の側面
建物などの資産は、長期間使用するもので、1年限りの消耗品ではありません。
「使う年数に応じて少しずつ費用を分けるべきだ」と考えるのは合理的で、その分割された費用のことを減価償却費と呼びます。
2:資産評価の側面
物件を購入して1年目が終わった時も建物は現物として残っています。
これは購入者の所有物であり、資産(財産)と呼んでいます。
年度末には、金額に評価して財産簿に載せなくてはならないもの。
建物の価値は、毎年減価償却費の分だけ減らすことになっています。
「購入した金額-毎年の減価償却費の累計額 」として、貸借対照表(B/S)にのせるルールになっていて、これが減価償却の資産評価の側面になります。
3:資金回収の側面
結局、減価償却費というのは、最初に払った購入代金の後計上に過ぎないともいえます。
減価償却費というキャッシュが毎年出ていっている訳ではありません。
つまり、減価償却という会計的手続きにより、過去の投資額を毎年少しずつ回収している、というのが資金回収の側面といえます。
- 減価償却の仕組みを理解しよう
それでは具体的に減価償却に仕組みについて考えてみたいと思います。
まず、理解しないといけないのは、資産には耐用年数というものがあるということです。
その資産が何年ぐらい使えるのか、という期間を、国が減価償却費を計算するために決めています。
不動産賃貸業に関係する建物という資産にも、耐用年数がその構造ごとに決められています。
(参照:国税庁 耐用年数(建物・建物付随設備))
例:建物の構造【耐用年数】※新築の場合です。
鉄筋コンクリート(RC)【47年】
鉄骨(4mm超) 【34年】
鉄骨(3mm超) 【27年】
鉄骨(3mm以下) 【19年】
木造 【22年】
また、国はこの耐用年数に応じて償却率を決めています。
例:(建物1千万円として)
鉄筋コンクリート(RC):
1千万円×償却率0.022(耐用年数47年)=22万円/年
木造:
1千万円×償却率0.046(耐用年数22年)=46万円/年
このように、鉄筋コンクリート(RC)であれば、毎年22万円、木造であれば、毎年46万円を経費として処理できます。
ということは、金額が同じ1千万円の建物でも、RCなら47年、鉄骨(4mm超)なら34年、木造であれば22年間かけて減価償却をしていくことになるので、耐用年数が短い建物ほど、年間の減価償却費が多くなって利益を圧縮することができます。
このように建物の構造によっても、節税できる金額が変わり、最終的に税引き後キャッシュフローも変わるので注意が必要となります。
- 中古物件の場合、減価償却の算出方法は少し違う
中古物件の耐用年数(減価償却期間)を算出する方法は、「見積法」と「簡便法」の2つがあり、先ほど説明した新築の場合と異なるので注意が必要です。
まず、「見積法」ですが、その建物購入後の使用できる期間を合理的に見積りして算出する方法です。
しかし、建物があとどれくらい使えるのかを合理的に見積もりするのは一般的には難しく、現実的でない面があるので、後で述べる「簡便法」で算出するケースが多くなります。
「簡便法」の耐用年数の計算方法ですが、その建物が耐用年数を超えているか、超えていないかで計算方法が変わります。
まず、築年数が耐用年数を超えている場合は、法定耐用年数の20%の年数が耐用年数となります。
例:
耐用年数47年のRCの建物で47年超経っている場合
→47年の20%で9年鉄骨(4mm超)の建物で34年超経っている場合
→34年の20%で6年木造の建物で22年超経っている場合
→22年の20%で4年- RC:法定耐用年数47年×20%=9年
- 鉄骨:法定耐用年数34年×20%=6年
- 木造:法定耐用年数22年×20%=4年
と、このようになります。(小数点以下は切り捨て)
次に、築年数が耐用年数を超えていない場合は、その法定耐用年数から経過した年数を差し引いた年数に、経過年数の20%に相当する年数を加えた年数が、耐用年数になります。
例:
RCの建物で10年経っている場合
→39年鉄骨の建物で10年経っている場合
→26年木造の建物で10年経っている場合
→14年- RC 築10年:(法定耐用年数47年-10年)+(10年×20%)=39年
- 鉄骨 築10年:(法定耐用年数34年-10年)+(10年×20%)=26年
- 木造 築10年:(法定耐用年数22年-10年)+(10年×20%)=14年
となります。
これまで見てきたように、減価償却費が多くなると、利益を圧縮する結果となり、節税ができるので、最終的に税引き後キャッシュフローは多く残ります。
新築よりも中古物件の方が、キャッシュフローの面では良く見えますが、耐用年数が短くなるということは、減価償却費を計上できる期間も短くなるということです。
それに加えて、金融機関から借りる借入金の融資期間は、中古物件の方が当然短くなります。
ですので、新築を建てるのか中古物件を買うのか、建物の構造、築年数という条件が減価償却費を決定しるので、金融機関からの借入金の借入期間とキャッシュフローの関係に注意しながら、事業の計画をしっかりと練る必要があるのです。
このように「減価償却」の仕組みを正しく理解して事業を進め、キャッシュを残す経営に努めていきましょう。
文/株式会社フィット「投資の窓口」編集部
2016/09/07