資産を未来につなぐ家族信託。デメリットも考えてみましょう。
2021/08/09
- 認知症リスク、相続リスクが高まっています
日本では高齢化が進むにつれ、オーナー様自身の認知症リスク、相続リスクが高まっています。その中で年々、家族信託などの生前対策のニーズも高まっています。本コーナーでも何度か取り上げており、認知症・相続対策としても効果的な家族信託ですが、メリットばかりではありません。今回はデメリットについて触れていきたいと思います。
- 家族信託のデメリット〜損益通算の禁止〜
アパートなどを複数所有している場合に、一番注意しなければいけないデメリットが、“損益通算禁止”の規定です。(租税特別措置法41条の4の2 )
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①信託財産である不動産(家族信託をした不動産)から生じた損失は無かったものとみなされ、信託財産以外からの利益と相殺することができない。
②信託財産から生じた損失を翌年に繰り越すことはできない。
- 事例で見る、家族信託のデメリット
所有する2棟のアパートのうち1棟を信託財産にした場合(信託財産:Aアパート、信託財産にしないアパート:Bアパート)でわかりやすくご説明します。
・Aアパートで大規模修繕を行い100万円の赤字
・Bアパートは100万円の黒字
どちらのアパートも信託財産にしていなければ、2棟の所得を合算するので所得はゼロです。
信託財産にしている物件がある下記の場合ですと、どうでしょうか?.
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今回のケースの場合、上の図のようなイメージになります。Aアパートの損失100万円は生じなかったものとみなされますので、Bアパートの所得100万円に対して税金がかかることになります。さらにAアパートの損失を翌年に繰り越すこともできません。
なお、信託契約がある場合(不動産ごとに受託者を別にするためなど)にもそれぞれの契約をまたいで損益通算することはできません。
アパートなどを複数所有している場合には、この損益通算の禁止による税務上のデメリットと、家族信託によるメリット(判断能力の衰退により不動産を含む資産の有効活用ができなくなる問題の解消など)をよく検討する必要があります。家族信託を行う場合には、ご自身やご家族の状況や赤字になりやすい大規模修繕の時期などを踏まえたうえで、導入時期なども検討する必要があります。デメリットを把握したうえで上手な対策を進めていきましょう!.
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▼『フィット賃貸経営通信』7月号より
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2021/08/09