認知症になってからではもう遅い! 早めの対策が必要な不動産オーナーの認知症対策③
2021/02/01
- 認知症になる前の対策
認知症が進行し「意思能力を欠く状態」になると、契約を締結することができなくなり、不動産活用が難しくなります。そして、認知症が進行してから契約を行い不動産活用をする場合、法定後見制度では専門職が関与し、その報酬負担や財産管理方法に制約があることなどから、デメリットもあり要注意です。
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それでは、認知症になる前であればどのような対策があるのでしょうか?いくつか方法が考えられますが、今回は、以下の2つの方法を説明します。
- ①任意後見制度の利用
こちらは、あらかじめ公正証書で、自らの後見人となるべき者を契約により定めておくことで、後見人を(裁判所が決めるのではなく、任意に)決めることができるというものです。
法定後見:後見人は裁判所が決める
任意後見:後見人は自分が契約で決める
ただ、こちらを利用すると、誰を後見人とするか、その後見人の権限も法定後見に比べると柔軟に決めることができるのですが、結局、後見監督人という後見人を監督する人が裁判所に選任され、この監督人に弁護士等の専門職が選任され、その報酬がかかってしまうことも少なくありません。
- ②民事信託
最近では、家族信託と呼ばれることもあり、こちらの呼び方の方が馴染みがあるかもしれません。
信託というと少し馴染みがないかもしれませんが、ごく簡単にいうと、財産をもっている人が財産の管理を委託し、管理によって生じた収益を受け取る制度です。
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財産管理を委託した人(不動産の所有者)を「委託者」、委託者から委託を受けた人を「受託者」、委託した財産から生まれた利益を受け取る人を「受益者」といいます。
この信託制度を使う場合には、オーナーご本人の判断能力がなくなっても、受託者が引き続き不動産などの財産管理を行うことができますし、その委託する財産の範囲や管理する人が誰か、その報酬も含めて柔軟に設定できますので、最近では民事信託を利用するケースも増えているようです。
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ただ、こちらについても、民事信託に対応する専門職(弁護士・司法書士)が必ずしも多くなかったり、税務上の損益通算の問題や税務申告の手間が増えるなどして、専門家への費用が加算されることなどもあります。そのことから、十分にメリット・デメリットを検討した上で利用する必要があります。
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このように、認知症が進む前であるといろいろと対策の選択肢はあるのですが、認知症が進んでからでは上記のような方法も採ることができなくなります。実際に、認知症が進んでからご家族がご相談に来られ、対応策は法定後見の申立てしかなかったケースもありますので、早めの認知症対策を進めて行く必要があります。
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2021/02/01