【相談】⽼朽化物件に対する修繕義務について
2020/11/02
- 修繕義務について
今月はあるオーナー様から、物件の⽼朽化に対する修繕義務に関してのご質問をいただきましたので、そちらについて回答したいと思います。
日本の賃貸物件は、築20年以上の物件が半数以上を占めている状況で、多くのオーナー様が直面している課題になるかと思います。Q:築50年の木造アパートのことで相談があります。先日入居者から、雨漏りの修補、居室内のきしみ音の修繕などを求められました。親から相続した物件で、借りる人がいれば借りてくれればよいというくらいの考えでしたので、修繕など考えていなかったのですが、修繕しなければならないのでしょうか?
相場よりも低額な賃料ですし、古い物件と分かって入居しておられるのですから、こちらとしては修繕はしたくないと考えているのですが、そのような考え方は認められるのでしょうか。
- 1.老朽化物件の修繕義務の範囲
民法上、修繕の範囲は、「賃貸物の使用及び収益に必要な修繕」と考えられています。ですので、たとえば内装や設備が古くなったからといって、入居者の要望に応じて、新品に取り替える、常に最新の状態に修繕するなどの義務まではないと考えられます。
上記の場合、雨漏りについては、通常の居住用物件としては使用収益がしがたい状況と言えますので、修繕義務を負うことの方が多いと考えられます。
これに対し、居室内のきしみは、物件の経過年数からして多少気になるような音がしても、直ちにきしみ音がするから居住用物件として使用収益ができない、とまでは言い難いことと考えられますので、法律上の修繕義務までは認められないことが多いかと考えられます。
(賃貸人による修繕等)
第六百六条 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。
- 2. 老朽化物件であり、家賃が相場より低額だから修繕しないという主張
このような主張については、賃料が全く考慮されないわけではありませんが、賃料が相場より安いことや、古い物件であるというだけ理由で、修補義務が免除されることにはなりません。
修繕義務を負いたくないという場合には、賃貸借契約書において、築年数の経過した物件であることや、賃料が相場に比べて低額であることを理由として、「賃貸人が修繕義務を負わない」という内容で契約することが必要です。
「安い物件だから、古い物件だから修繕しなくてよい」とはならないので、しっかり契約書で取り決めておく必要があります。
▼『フィット賃貸経営通信』10月号より
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2020/11/02